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ポールクライミング工法−お寺さんの[クスノキ]伐採
お寺さんの樹齢70〜100年、20mのクスノキの大木伐採です。
真横に本堂の大屋根。
太い枝は屋根の上にもしっかり広がっています。
大木の真下は、檀家さんのお墓。
本堂の大庇が障害となり、上部はクレーンが使えない。

一本の枝も下には落とせない......。

クレーンが使えるのは本堂の軒下の幹から下。

20mの樹上で50〜100kgの枝を全て人力で伐採し下ろします。

「ポールクライミング工法」が真価を問われるケースです。!!

クスノキの生命力は強く、石垣や家の土台も起こしてしまいます。
歴代の住職様のお墓の基礎や石垣が根の力で壊れかけたので、やむなく伐採する事となりました。
今回は、地元の造園・石材業者様との共同プロジェクトです。

胸高の直径65cm 10mあたりでも直径50cmの大木です。
少なくとも、地上7mまでは全て手作業で伐採しなければならないので、これは大変な難工事になりました。
足場を組むにもエリアが広すぎて..下の状況がこれではかえって危険。
やはり、「ポールクライミング工法」がベストと判断しました。
まずはポールをセットします。
ポールをセットします。
上部の太い幹をカットするときに大きな力を発揮します。
枝はあちこちから吊って降ろせますが、メインの幹だけはそうもいきません。

ポールで細かくカットした幹を吊り下げ、少しずつ降ろします。

樹木との間にも補強を入れ、しっかり固定します。
直下の墓石をガード
ポールの設置と平行して、直下の墓石を鋼管パイプや足場板でしっかりガードします。

伐採ができても、大切な墓石や本堂を壊しては全く意味がありません。予算の関係から本堂の屋根はノーガードです。

とにかく技術で絶対落とさないようにするしかありません。
きびしーーーーーい!!!!
15m付近から真下を見た写真です。
ポールとの距離が....。
かなり曲がりくねっているので、上部の幹ではポールとかなり離れてしまう部分があります。

補強材を追加して、アルミパイプと樹木をガッチリ固定する事が大切です。ポール最上部で16mなので最上部までは届きません。


それにしても、本堂の屋根が近すぎる!!!
15mの高さで枝先へ
葉の付いた枝先は重いので、このまま枝の根元で切断すると、お辞儀をしてしまい、本堂の屋根にぶつかる可能性があります。
どうしても枝先にロープをくくり、ひっぱっておく必要があります。こんな時は、もう一人が
※ビレイすればかなり枝先まで近づけます。いくらビレイしてあると言っても、現実にはかなり緊張する一瞬です。ポールの先端で16m、木の最上部ははるか上です。
※ビレイ:先行するクライマーがバランスをくずしてももう一人のパートナーが即座にロープをロックして転落を止めるロッククライミングの安全システム。
宙吊りカット
直径30cmの横枝。枝先をカットするにも作業者のバランスが取れない。根元で切ると重すぎる...結局2m程度、推定100kg程度の位置でカットする事にしました。

絶対落とせない!! 切った瞬間にロープで吊るす!!
そのままゆっくり降ろす。!!テクニックの見せ所です。

隣の木からロープをつなぎ、物干し状態にして、カットしたところです。切断後もうまくぶら下がり、ゆっくり安全に降ろす事ができました。(Wテンション−ハイラインシステム)
ヨットのマスト? ハープ?
葉のついた横枝は全てカットした状態です。

これからが本番!
ポールを桟木で補強し、太い幹を上から少しずつカットし降ろします。

一番はなれている箇所で3m。最低50kg程度は吊りたいので、ポールが曲がらないようにしっかり補強しておきます。

この状態で、50kg〜100kg程度の重さなら安全に降ろせます。作業者もポールを使うので、あまり重いサイズをカットすることはできません。上から小さくカットして下ろし、桟木をはずしてはカットし......

クレーンが使えるならワンカットですむのに....

あせらず、少しずつ......
こんな感じで安全作業
ポールがあるので、360°自由に動けます。
足場の上で作業するより、安定感もあり、実際に安全です。


メインの幹。これがまだ直径50cmあるので、まだまだ重い。
50cm程度の長さでも50kg以上あります。
樹上作業で50kgは、けっこうきびしいので、とにかく慎重にやる必要があります。

もうすこしで、クレーンが使えるのであせらずやりましょう!

枝葉の処理も完璧
地上では本職の造園業者さんがしっかりサポートしてくれています。処理の手際良さは抜群です。さかばらないように葉・小枝も手鋏で細かく丁寧にカットしていました。

地上での段取りが良いと樹上作業もスムーズに進みます。今回は難工事にもかかわらず、しっかりとサポートいただいたので気持ち良く仕事が進みました。


下部の幹はクレーンが使えたのでかなりスムーズに進みます。

体積から重量を計算するのですが、生木の比重はデータブックとは全く違います。ほとんど水と思っていたほうが安全です。軽くみると事故のもとです。生木は重いんです!!

重心を考えて慎重に玉掛けしないとひっくりかえったり、すっぽ抜けたりします。ぴし〜とスリングベルトを「あだ巻き」に掛けて300kg〜500kg程度に切断して直接トラックへ積み込みます。

やはり、引き取り希望の方も多いようです。
これだけしっかりした幹だと、何にでも加工できそうです。
このままでも、りっぱなオブジェになりますよね。